箱根の山

首都圏に住んだことのある人なら、誰でも箱根に一度や二度は行ったことがあるだろう。しかし、そこの山に登ったことがあるという人はかなり限られているだろう。

かく言う私自身、長いこと箱根に登山で行ったことはなかった。ただ自分のホームグラウンドである丹沢は登り尽した感があり、ある時点から日帰りできるコースとして箱根を選択肢に加えるようになった。山を知るようになってから、箱根のことが何倍も何十倍も好きになった。最後に温泉が待っていてくれるコースというのは、山歩きの足を信じられないくらい軽くしてくれる。

いちばん最初に歩いたのは、南足柄市の大雄山最勝寺から入って、外輪山の明神ヶ岳~明星ヶ岳から宮城野に下りる定番コース。外輪山の縁を歩く楽しさと宮城野温泉の泉質に魅了され、いっぺんに箱根の山に惹きつけられた。

山の楽しさのひとつは、地図を見ながら遠くに見える頂の名前を確定していくことだが、御殿場から入って外輪山を回った時は、神山の中腹にある大涌谷の煙が思いがけない方向に見えて面白かった。中央火口丘(昔は内輪山と言った)にコンパスの一方の脚を置いて、ぐるっと回転させる感じで、乙女峠~金時山~火打ヶ岳~明神ヶ岳と回り、最後は宮城野に下りるロングトレイルだった。外輪山の4分の1くらいは歩いたかもしれない。

山に入る時はいつも、「山中にいる時、事件が起きたらどうしよう」という職業的な恐怖心と戦いながら歩くのだが、箱根なら交通の便も良いし、その点も有難かった。

これだけ開発された箱根だが、山は昔と変わらぬ貫録と品格を備え、足下まで押し寄せたゴルフ場やレジャーランドを、「それがどうした」と平然と見下ろしている。今度日本に帰る機会があったら、箱根の山に挨拶に行きたいが、小田急の渋沢や新松田を通過する時、丹沢からとっちめられないか、ちょっと心配だ。

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