「必要から徳を作る」

この前、久しぶりに長距離の飛行機に乗る機会があった。私は短距離のフライトの時は、下が見たいから窓際の席、国際線など長距離の時は手洗いのことを考えて、通路側を希望することにしている。その日は幸いaisleの座席が取れて、これなら大丈夫と、安心してワインなどを口にしていた。

私の隣はアメリカ人の母娘だった。食事が終わった頃から娘さんの様子がおかしくなった。気分が悪くなったらしく、キャビン・アテンダントから薬をもらったりしていたが、そのうち洗面所に行くようになった。

2回目に席を立った後、私はお母さんに声をかけて、通路側の席を譲り、窓際に移動した。せっかく通路側の席だったのになあ、という思いはちょっとした。

そのうちお嬢さんの具合は良くなったらしく、通路側の席からは笑い声も聞こえてくるようになった。ホッとしたのだろう、お母さんが私に感謝の言葉を掛けてくれた。アメリカ人だったら誰もがすることをしただけなのに、「あなたはジェントルマンだ」とこちらが照れてしまうようなことまで言うのだ。

その時思い出したのが、昔どこかで聞いたfaire de nécessité vertuというフランスの言葉だった。直訳すれば「必要から(が)徳を作る」。どうせやらなければならないことなら積極的にやりなさい、という意味も込められているのだろう。なるほど、あの言葉の意味はこういうことだったのだ。

しかし、徳というのはキビシイものだ。フライトの前半、いい調子でワインを飲みすぎたので、窓際に移った後は、「タンク」が満タンでしんどかった。

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